婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「ユニコーン。姿を見せてもいいよ」

 フィル様の言葉でなにもない空間が揺らめき、銀色の毛並みが美しい有翼のユニコーンが姿を現した。
 寄り添うように鼻先を擦りつけ、フィル様に甘えているような仕草を見せる。

 治癒室で見た時にはなかった翼を広げ、それがフィル様と契約して神獣になった証だと物語っている。
 バハムートやフェンリルと同じく、ユニコーンにもフィル様の空色の瞳が(きら)めいていた。

 やっぱりフィル様だわ……ユニコーンとも契約していたなんて、全然気が付かなかった……!

 どこまでいっても腹黒な婚約者に、最近では安心感さえ覚え始めている。『だって、僕がラティを手離すわけがないでしょう?』と言った、フィル様の言葉が蘇った。

 あの時すでに、フィル様はこの国議の行方を描いていたのだ。すべて思うがままに、望む結果へ転がっていくように。

「おおお! まさか、ユニコーンまで契約されたのか!?」
「フィルレス殿下は、まさしく王になられるお方だ!」
「なんて美しい……! これが神獣ユニコーンか!」

 貴族たちもユニコーンを目にして、感嘆の声があちこちからあがる。だけど国王陛下だけが、怨嗟のこもった視線をフィル様へ向けていた。

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