婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「ご安心くださいませ、国王陛下、王妃殿下。わたしは大地の神に選ばれし、聖浄の乙女でございます。聖なる幻獣ユニコーンとともに、ヒューデント王国をお守りいたしますわ」

 大地の神に選ばれた聖浄の乙女——通称聖女は、この世界で特別な存在だ。

 この世界の創世神、太陽の神の末裔であるヒューデント王族はすべてを破壊尽くす攻撃魔法を操り、大地の神の末裔であるアトランカ皇族は鉄壁の守りを誇る。その大地の神から加護を与えられたのが、世界の穢れを清める聖女だと伝わっている。

 その証として聖なる幻獣ユニコーンが聖女に寄り添い、世界に溜まった穢れを祓うのだ。ユニコーンも結界や浄化の力を操る存在で、その力は未知数だ。

 聖女も聖なる幻獣もアトランカ皇族には及ばないが、結界を操る貴重な存在だ。しかしそのアトランカ皇族は最近魔力が落ちたと聞く。事実上聖女が世界で一番大地の神に近い存在だ。

 その聖女が現れたと連絡が入ったのは、つい三日ほど前のことだ。そのままフィルレスの耳に入らないよう箝口令を敷き水面下で面会の準備を進めてきた。

 聖女と聖なる幻獣が自分の背後につけば、もうあの化け物に怯えて暮らさなくても済むのだ。

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