婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「うむ、心強い言葉だ。これからは存分にわしのために働いてもらうぞ」
「あんな治癒士上がりの年増より、大地の神に認められたブリジットの方が何倍も婚約者にふさわしいわ」

 王妃が忌々しげに眉をひそめた。王妃の言いたいこともわかる。

 ただの宮廷治癒士を専属治癒士したところまでは理解できるが、フィルレスはなぜそんな女を婚約者にしたのか理解できなかった。

 月の女神の末裔だと言っていたが、胡散臭くてわしも王妃もそんなものは信じていない。証明するものが古びた文献だけで信憑性にかけるし、そもそも治癒魔法しか使えない役立たずなのだ。

 わしが整え直したエルビーナとの婚約も蹴って、結婚式の日程まで勝手に決めてしまった。せめて結婚式の前になんとか婚約者をすげ替えて、国王としての威厳を示したい。

「そうだな……ブリジット。この場でわしに絶対の忠誠を誓えるか?」
「はい、もちろんでございます。わたしはヒューデント王国の聖女なのですから」

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