婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「それと、今後は万が一のことを考えて食後はしばらく僕と一緒に過ごしてもらうよ。一緒にいられない時は治癒室にいってほしい。エリアスや他の治癒士がそばにいれば治療をすぐに受けられるだろう?」
「あ、それならついでに治癒室の手伝いをしてもよろしいですか? 治癒室でぼーっとしているのは多分無理なので」
「ふふ、いいよ。すぐに治療を受けられる状態でいてくれるなら好きにして」
「ありがとうございます」

 私は治癒室での忙しい毎日を思い出していた。休憩時間もろくに取れないこともあったけれど、とてもやりがいのある仕事だった。なんだかんだ言っても、私は父の血を色濃く受け継いでいるのだ。
 人々の傷を癒して笑顔になる瞬間がとても好きだった。

「ああ、それと——」

 フィル様に視線を向けると、今まで見たことがないくらいのドス黒い笑顔でこう言った。

「今回の犯人を捕まえたら徹底的に排除するから、もしかしたらラティに影響が出るかもしれないけど、構わないよね?」
「え、影響ですか?」
「うん、大したことはないと思うけれど、役割や重責に変化が生じるかもしれない。いざとなったら僕もフォローするから」
「はい……それなら大丈夫かと思います」
「よかった。これで心置きなく仕事ができるよ」

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