婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 ヒューデント王国には王子がふたりいて、王太子のフィルレス様は先日専属治癒士だった女と正式な婚約を結んだ。第二王子のアルテミオ様はすでにルノルマン公爵家の長女と婚約している。

 聖女に選ばれるくらい優秀なわたしにふさわしいのは王子くらいだろう。わたしはフィルレス様なら見合う相手だと思った。さらに、フィルレス様の婚約者は伯爵家、しかも治癒魔法しか使えない女なのだ。

 それなら魔力も豊富で攻撃魔法を操れる上、大地の神に選ばれたわたしの方が絶対にふさわしい。

「この国のためにも、フィルレス様の婚約者にはわたしが選ばれるべきなのよ……!」

 なによりも国王陛下と王妃殿下が、わたしをフィルレス様の婚約者にしようと動いてくれるのだ。いずれわたしが王妃になるのも明白だ。

「ふふふ……わたしがこの国で一番の女性になるわ。聖女に選ばれた特別なわたしがいずれ王妃になるのよ……!」

 いつの間にか姿を消したユニコーンは気にも止めず、わたしは少しだけぬるくなった紅茶を飲み干す。

 これから訪れる自分の未来に、胸が高鳴っていた。


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