婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
『えっ……これはなに!? 擦っても消えないわ……!』
《それは大地の神が認めた聖浄の乙女の証。この地の穢れを祓うのがお前の役目、私はそれを補助する存在だ》

 ユニコーンの言葉の意味を理解すると、わたしは胸の奥から歓喜が湧き上がる。

 わたしは選ばれた存在なのだ。特別な聖女に選ばれたのだと。

 いつもいつもわたしの周りには手の届かないような令嬢がいた。
 頭脳明晰で政治的手腕にも長ける、イライザ・アリステル。宝石すら霞んでしまう美貌のエルビーナ皇女。他にもコートデール公爵家の末娘は野蛮な女騎士のくせに皇太子に身染められた。

 なのにわたしは平凡でなんの取り柄もなかったから、ただの貴族令嬢として埋もれていたのだ。

 やっと、わたしを認めてくれる存在が現れた。


 ——それなら、伴侶も特別でなければならないわ。


 聖女に選ばれたことを理由に、当時の婚約を破棄した。相手は王城の文官だったけど、悲しそうに「わかった」と言って受け入れた。真面目だけが取り柄のつまらない人だから、清々して気分が晴れやかだった。

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