婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「そうだな。こう言ってはなんだけど、おそらくラティを認めたくなくて、なんとかして引き摺り下ろしたいだけだと思う。まあ、僕がそんなことさせないけどね」
「そうですか……ですが、できれば私は王妃様にもアルテミオ様にも認めてもらいたいと思います」

 やっとここで自分の気持ちを伝えることができた。王妃様はフィル様の生みの母であるし、アルテミオ様は血を分けた兄弟だ。

「それは必要ない」

 フィル様の氷のようなひと言に、私は固まった。

 切り捨てるように拒絶されたのは初めてだ。どんな時も穏やかで甘い言葉を返してくれていたので、すぐに反応できない。

 私が戸惑っていると、フィル様は起き上がり執務机に戻っていく。

「ラティ、国王と王妃については接点を持つ必要はないよ。教師の件も僕から断りを入れておく」
「フィル様……どうしてそこまで実の両親を拒絶されるのですか?」

 私は思い切ってフィル様に尋ねてみたが、そう聞いたのをすぐに後悔した。フィル様の表情が抜け落ちて、瞳から光が消えた。

< 79 / 237 >

この作品をシェア

pagetop