婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 慌てて質問を撤回する言葉を口にする。

「不躾なことを尋ねて申し訳ありません」
「……ラティにとっていつも最善を考えているから、それだけは理解してほしい」
「はい、もちろんです。私もフィル様のためにできることはなんでもします」

 私は治癒室でさまざまな人間関係を見てきた。例え血縁関係であっても愛や優しさがあるとは限らない現実を知っていたのに、迂闊な自分の発言を強く反省し申し訳なさでいっぱいになる。

「なんでも?」

 今度はフィル様の瞳がギラリと光った。いつもと違う雰囲気に背中を嫌な汗が伝う。私はなにか選択を誤ったのかもしれない。

「そう……それなら、こっちに来てくれる?」

 その言葉に逆らうなんてできなくて、素直にフィル様のかける椅子の隣に立った。

「あっ!」

 フィル様は無言で私の腕を引いた。突然のことだったので、私はバランスを崩して椅子に座っているフィル様の膝の上に乗ってしまう。まるで食事を食べさせてもらう時のような姿勢になった。

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