【短】最強のあたしが3番目に強い男に恋をした
恋がしたい!
路地裏でチンピラを黙らせたばかりのあたしは、パーカーのポケットに拳を突っ込んで表通りに戻ってきた。
いわゆる普通のやつらが平和な話題で盛り上がるのを横目に見ながら、倉庫に行こうかな、と考える。
人生を変えるきっかけと出会ったのは、そんな時だった。
《♪ああ 好きが止まらない 君に会いたいな》
よくあるラブソングだ。
そう思いながらも、可憐な歌声に惹かれるように、街頭広告を見上げた。
ビルに貼り付いた大画面に流れていたのは、知らないアイドルのMV。
ボブヘアの女の子が、頬を赤らめて、体の内側から溢れ出したような好きを、その表情で表現していた。
つられて、あたしの胸がドキドキしてくる。
――いいな。
その一言を胸の内で呟いた直後、あたしは走り出した。
心の奥底から湧き上がってきた感情に、突き動かされるように。