君が導き出してくれた私の世界

ことの発端といえば、先日、唯花ちゃんと一緒に楓くんの家に遊びに行った時のこと。

『もうそろそろきゅうりの収穫しなきゃ』とおばさんたちが話をしているのを見かけたのは。

唯花ちゃんは初めて楓くんの家に訪れた際、耳が聞きえないおばさんのことをすぐに受け入れていて、私と何度も手話を交わしてきた為か自然とおばさんとも手話で話せるようになっていた。

いつも私たちのことを可愛がってくれるおばさんたちに少しでものお礼をしたいと思い、『それなら私たちにも手伝わせて下さい』と快く引き受けたことがきっかけだった。

それで今日から始まったきゅうりの収穫。

畑での作業なので、多少は汚れても大丈夫な服装で、熱中症対策として帽子を被って日焼け止めを塗って万全の態勢で挑んでいるが、額から滲み出る汗はタオルで拭ってもまた数分もしないうちに汗は出る。

作業自体はそんなに難しくはないけれど、この暑さの中でするのはどうにも耐え難く、こんなに大変だとは思いもしなかった。

収穫するにあたって、初めにおじさんから説明を受けた。

実の表面のトゲがとれると鮮度は落ちてしまうらしく、きゅうりの首のほうを持ってハサミでカットする。

中でも、曲がりきったきゅうりなどはお店には出せないみたいで、どんなに大切に育てても見た目を重視されてしまうそうだ。
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