君が導き出してくれた私の世界

夕飯を食べ終えた夜。

自室にて、明日、学校に持っていく持ち物の最終確認をしていた。

筆箱も、宿題も入ってる。

あとは、明日の朝、水筒とスマホを入れるだけ。

始業式とホームルームしかないから、午前中で終わる。

早く帰れると嬉しく思う反面、また明日から大嫌いな学校が始まってしまうのかと考えると気持ちは複雑。

結局、最後の日まで楓くんに会わないまま夏休みが終わってしまった。

唯花ちゃんとは何度か買い物に行ったりしたけど、楓くんとはあれから会っていない。

彼はバイト三昧で忙しいのもある。

だけど、休みの日には遊びに誘ってくれた。

なのに私は……。

ーーブーブー。

机の上に置いていたスマホが振動した。

手にとってみると、楓くんからのメッセージ。

【バイト終わったけど、今から会える?】

その言葉に嬉しくなるけど、同時に胸が締め付けられる。

たまに、楓くんがこうやって誘ってくることもあるけれど、その度に私は会えない理由ばかり作ってた。

楓くんと会ったら、もっと好きになってしまいそうだから。

そしたら、自分が自分でいられないような気がした。

それに、こんな学校では話せない自分が楓くんのことが好きなんてきっと迷惑に決まっている。

だから、私は楓くんと距離をとった。

もう気持ちが溢れてしまわないように。
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