【コンテスト作品】たこ焼き屋さんの秘密。

 
 それから数日は、残業が続き仕事が終わるのが遅くなってしまったため、たこ焼き屋に寄ることはなく真っ直ぐと家に帰っていた。
 気が付けば今日は金曜日。花の金曜日だ。いわゆる花金だが、残業で疲れている私は、飲みに行く余裕すらもない。

 疲れた身体で真っ直ぐ家に帰ろうと駅の改札を出ると、仕事帰りのサラリーマンたちが仲良く駅の向かいにある居酒屋へと入っていく姿を目撃して、ため息をつく。

「はあ……疲れてるな、私」

 駅から家までそんなに遠い訳ではないが、今日に限ってはその距離が少し遠く感じる。
 もう一度ため息を吐き、ゆっくりと歩き出す。

 明日は休みだけど、このままだと一日寝て過ごしてしまいそうだ。
 なんとも言えないけど、それほどまでに疲れている。 後輩のミスを押し付けられ、その責任を取らされてやり直しさせられているのだから、そりゃ疲れる。

 しかしこんな時でもお腹が空くのが人間だ。お腹空いてるから、いつものあのたこ焼きの匂いで更にお腹が空いてしまう。
 トボトボとたこ焼き屋の前を通りかかると、いつものお兄さんが「お姉さん、お疲れ様です」と声を掛けてくれる。

「あ……こんばんは」
 
「今日も残業なんですか?」
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