【コンテスト作品】たこ焼き屋さんの秘密。


 オムレツを一口食べると、なんだかホッとした。

「……美味しい」

「だろ?」

「すごく……美味しい」

 本当にいっぱい野菜が入ってて、卵がフワフワしててとっても美味しい。

「ちょっとは元気になってくれた?」

 お兄さんは私の隣に座る。

「……はい。ありがとうございます」

 美味しいものを食べると、なんか幸せな気持ちになる。

「ならよかった」

 お兄さんはなぜ、私にそんなに優しいのだろうか? サービスしてくれたり、メニューにないもの作ってくれたり。 
 優し過ぎやしないだろうか。

「今お客さんいないし、ゆっくり食べてってよ」

 お兄さんは私の頭を優しくポンポンしてくれる。

「……あの」

「ん?」

「名前……聞いてもいいですか」

 そういえば、名前聞いてみたいと思ってたんだ。ずっとそう思ってたのに、忘れていた。
 聞くなら今しかない気がする。

「俺の名前は、郁(かおる)、杉並郁。よろしくね、お姉さん」

「私の名前は、水城(みずき)智世里(ちせり)です」

「智世里か……。いい名前だね」

 郁さんはそう言って、とびっきりの笑顔を私に向けた。

「俺のことは郁って呼んでよ、智世里さん」

「え……?」
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