【コンテスト作品】たこ焼き屋さんの秘密。


 なぜか智世里と名前で呼ばれると、ちょっとだけドキッとした。

「智世里さんさ、彼氏とかいるの?」

「え、なんで?」

 なんでそんなこと聞くんだろう……?

「いるの?彼氏」

「……いないよ」

 するとすかさず郁さんは、「好きな男は?」と聞いてくる。

「好きな人も……いないよ」

 そう答えると、郁さんは安堵した表情で「よかった」と答える。

「え……?」

 よかった、って……? 

「ずっと聞こうと思ってたんだけど、聞けなくて」

「……ん?」

 え、なんでそんなこと言うの……?

「俺ね、たぶんなんだけど」

「……うん?」

「智世里さんのこと、好きなんだよね」

 そう言われた瞬間は、頭の中がハテナでいっぱいになった。

「……ええっ?!」

「いや、驚きすぎじゃない?」

 いや、ちょっと待って? こんなタイミングで告白って……!
 全然想像してなかったんだけどっ!

「え、待って待って! いつから?」

「いつからかって言われると、分かんないんだけどさ、気がついたらいつの間にか好きになってた」

 気がついたら、いつの間にか……。ただのたこ焼き屋さんだと思ってたんだけど、そういう感じ……だったんだ。
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