ダイエット中だけど甘い恋を食べてもいいですか?
「とりあえず、俺とデートしてみない?」

「へ?」

響さんに突然そう言われ、私はうろたえてしまった。

今夜は珍しくお洒落な洋風居酒屋の個室で、キッシュやらスパニッシュオムレツやらをつまみながら、響さんとの夕食を楽しんでいたところだった。

こんな狭い空間でふたりっきりの時にそんなことを言われたら、口説かれているのでは?と勘違いしてしまうではないか。

「デ、デート?」

「ほら、芽衣が勇吾君の彼女と会うのに俺も付き合うって言ったろ?カレカノのフリをするなら、それっぽく見えるように練習しといた方がいいんじゃないかと思ってさ。」

あの後、勇吾君から連絡が来て、文香さんと会うのは来月の初めの土曜日に決まったのだった。

「でもお忙しいのに、そこまでしてもらうわけには・・・。」

「俺、芽衣を連れて行きたいところがあるんだけど、どう?」

「連れていきたいところ?」

「今度の日曜日の予定は?」

「大丈夫・・・ですけど」

「じゃあ決まりな。俺、車出すから。」

「はい。」

「・・・そうそう。ダイエットの成果は?」

「ええと、2キロ痩せました。」

「おっ。頑張ったじゃん。目標体重まであと何キロ?」

「あと3キロです。」

「そうか。頑張れよ。」

響さんはそう言って目を細めると、私の頭をくしゃくしゃと撫でた。

でも私はダイエットの話より、デートのことで頭が一杯だった。

・・・響さんてやっぱり大人だな。

サラッと誘って、すぐに他の話題に移れるなんて。

私ばっかりドキドキして馬鹿みたい。

それからの私は、何の話をしていても、胸の高鳴りが抑えられなかった。
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