ダイエット中だけど甘い恋を食べてもいいですか?
「ねえ順~。どれがいいと思う?」

「なんだよ。さっきからうるさいな。」

私はそう言って顔をしかめる順を自分の部屋に引っ張り込み、ベッドの上に並べた3パターンの洋服を見せた。

ひとつは水色のパステルカラーの可愛いワンピース。

ひとつはダボっとしたTシャツにデニムのスカート。

ひとつは濃いパープルのVネックニットシャツに千鳥柄のロングスカート。

「可愛い系がいいかなぁ。それともスポーティで中性的な感じがいい?大人っぽいスタイルもアリかも・・・。順はどう思う?」

「・・・芽衣ちゃん。そもそも僕、何にも聞いてないんだけど。」

「え?何が?」

「まず・・・誰とデートするのさ。僕の知ってる人?いつもの勇吾君?」

「えーと。順の知らない人だよ。フィットネスクラブで知り合ったの。」

「なんて名前?」

「澤乃井響さん。」

「年齢は?」

「私より7歳上って言ってたから30歳・・・かな?」

「ええ?7歳も年上なの?オヤジじゃん!」

「でも全然オヤジっぽくない人だよ?むしろ格好いいっていうか・・・」

「仕事は?何してる人?ちゃんとしてる人なの?」

えっと仕事・・・何て言ってたっけ?・・・晴山さんの話だとアブナイ系の人かも?

「うーん。よくわからない。」

私が適当にそう言うと、順は目を吊り上げた。

「ロクに素性もわからない人とデートに行くなんて危ないよ!僕は反対だからね!」

「大丈夫だって。いい人だから。」

「芽衣ちゃんは隙が多いから心配なんだよ。」

「もう~。シスコンもいい加減にしなよぉ?」

私は順の腰に抱きついた。

「おいっ!芽衣ちゃんの方がブラコンだろ!やめろっ!」

「じゃあ、アドバイス頂戴よ。」

順の腰から手を離した私は、そう言って順を横目で見た。

「・・・デートってどこへ行くの?遊園地に行くなら動きやすい服の方がいいし、お洒落なバーへ行くなら大人っぽい服の方がいいし・・・。」

「どこへ行くのが教えてもらってない。」

響さんは連れて行きたいところがあるって言っただけだった。

「じゃあ、知らない。芽衣ちゃんが自分で考えな。」

順は冷たくそう言い放つと、自分の部屋へ帰ってしまった。

順の言う通りだ。

TPOはわきまえなければならないよね。

私は3パターンの洋服を眺めながら、うーんとつぶやき、頭を悩ませた。
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