結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …

「そうだったんだ。…じゃあ、俺は本当の両親を殺しちゃったって事なのかな? 」
「そうじゃないよ。そんなふうに、言うのはやめるんだ」
「うん…。あの時、何となく懐かしい感じがしていたんだけど。…生きていたら、お礼を言いたかったよ」
「お礼? 」
「俺の事を産んでくれて、有難うって…」

 悲しみで茫然としていた聖龍の目に、少しずつ生気が戻って来た。
 
 あの時。
 柚香の両親が抱いていた聖を見た時、聖龍は何故かあの子を傍に置いておきたい! そう思って養子縁組の話を持ち掛けた。
 決して実の子供である柚香が可愛くないとか、そう言った理由ではなかった。
 男の子が欲しい願望と赤ちゃんの聖に惹かれてしまったのだ。

 まだ名前もついていない赤ちゃんに「聖」と名づけた。
 自分の名前の一文字をとってつけたのだ。
 しかし、柚香の実の兄の名前も聖一郎だったことで、偶然にも同じ字が入っていて何かつながるものを強く感じていた。

「父さん、俺。これからも、父さんの子供でいていい? 」
「勿論だ」
「よかった」
「柚香は出て行ってしまったが、必ず探し出すから安心しろ」
「分かったよ。俺も、柚香と別れる気は全くないから」

 
 その後。
 理子は逮捕されて、複数の交際していた男性を殺害していた事も明白になった。
 愛香里殺害事件は、理子がまだ12歳未満だった為、罪にはならないが柚香の本当の両親を殺害した事も、言いなりにならなかった個搭載相手を殺害して来た事も重ねて、極刑はまぐがれないだろうと言われている。

 逮捕されても理子は「私はやっていない。証拠を見せて」と言っている。
 警察側が証拠を見せても認めず、都合のいいように言葉を解釈してしまい話が通じないようだ。
 しかし警察側も粘り強く何度も同じ事を、繰り返し聞いている。

 
 宗田ホールディングにも聞き取りに警察官が出入りしたり、聖一郎の事務所にも色々と聞かれる事があり暫くはバタバタとしていたが時間が経過すると共に落ち着きを取り戻していった。

 柚香の行くへは一向に解らないままで、聖一郎も探しているが分からないと言っていた。

 携帯電話はコールは鳴るものの、繋がる事はなく聖は何度も「離婚はしないから」とメールを送り続けていた。






 
 3ヶ月後。

 ようやく落ち着きを取り戻し、聖も通常勤務に戻れた今日この頃。
 聖龍は今回の事をきっかけに、聖に社長の座を譲り会長になりゆっくりと過ごしてゆきたいと願い出た。
 だが聖は柚香が見つからないままでは社長にはなれないと言っていた。

 そんな時。
 聖一郎から聖に連絡がきた。

「え? それはできません。俺、柚香と離婚する気はありませんから」
 電話を受けた聖は真っ青な顔色になっていた。
< 66 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop