クールな救急医は囲い娶ったかりそめ妻に滾る溺愛を刻む【ドクター兄弟シリーズ】
百五十八センチの私より二十センチ以上背の高い彼は、たしかに余計なぜい肉などなさそうで、鍛えているのだろうなと思わせる体つきをしている。
とはいえ、ここまでしてもらわなくてもと焦って首を横に振ると、彼はふと立ち止まり私に視線を送った。
その際、艶(つや)のある少し長めの前髪が揺れ、彼の右目の少し下にある小さなほくろを発見した私は、距離の近さを改めて意識してしまい、たちまち鼓動が速まっていく。
「このほうが婚約者らしいだろ?」
「あ……。はい」
藤野さんが見ていると想定しての演技のようだが、それにしたって照れくさすぎる。
納得して力を抜いて体を預けると、彼は満足そうに微笑み、なぜか整った顔を傾けて近づけてくるので息が止まる。
唇と唇が触れるまであと数ミリ。
突然の出来事に反応できないでいると、やがて彼は離れていった。
「キス」
「は?」
「したように見えただろ」