クールな救急医は囲い娶ったかりそめ妻に滾る溺愛を刻む【ドクター兄弟シリーズ】
まるで子供に言い聞かせるような言い方だったけれど、声色が優しくて気持ちが落ち着いてきた。


「はい」


返事をすると、彼はすぐに身をひるがえして出ていった。

まさか、また助けられるとは。
でも、彼が来てくれてよかった。

藤野さんにここまで追いかけてこられるとは想定外で、まったく対応できなかったから。

慣れ親しんだ店舗から移り、引っ越しまでしたというのに、この先どうしたらいいのだろう。

堀田先生が婚約者の振りをしてくれたとはいえ、あれほどしつこくつきまとわれては嘘だとばれてしまうに違いない。
そうなったらどうしたら……。


「用意しなくちゃ」


とにかく今は、ここから離れたい。
今晩ここでとても眠る気にはなれないのだ。

私はクローゼットからキャリーバッグを取り出して、当面の生活用品や洋服などを詰め始めた。



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