悪役令嬢に転生したのですが推しのイケオジ騎士様(モブキャラ)と恋に落ちるルートはどれですか!?
 マリーに悪いことしちゃったな……。

 ため息をこぼしながら、レオンに手を引かれて寮までの道を歩く。

「エレーナ、どうしたんだい? まだ具合が悪い?」

「い、いえ! 何でもないです……」

 夕日の差し込む廊下。少しだけ前を歩くレオンが振り返り、私の顔を覗き込む。

「何でもないなら、そんなため息はこぼれないだろう?」

 歩みを止めたレオンは、私の顔に自分の顔を近付けた。間近でレオンと目が合って、ドキリと胸が跳ねる。

 エスコートはされ慣れているし、手は幼い頃から何度も繋いでいる。けれど、こんなに近いのは初めてだ。

「エレーナ、君は私の婚約者なんだ。隠し事はナシだよ」

 レオンはふわりと微笑む。

「隠し事なんて……」

 ありません、と言った所で無駄だ。
 幼い頃から、多くの時間をレオンと過ごしてきた。そんな嘘は、簡単に見抜かれてしまうだろう。

 言葉に詰まると、レオンは困ったような笑みを浮かべた。

「エレーナがそう言うなら、隠し事はないんだろうね」

 レオンはこの会話はそれで終わりというように、また前を向いた。

 夕日の差し込む石造りの廊下は、私たち以外には誰もいないのか、しんとしている。

 私は顔を上げた。その刹那、レオンが振り向く。はっとする間もなく、彼の顔が私の顔に近づき――

 ――チュ

 優しい音を立てて、唇に柔らかな熱を感じた。

 驚き目を見開くと、レオンはまたふわりと微笑む。

「私の可愛い婚約者。悩み事があったら、いつでも相談するんだよ」

 そう言うと、レオンは再び私の手を引いて、廊下を歩き出した。

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