だからこの恋心は消すことにした。
それから数十分くらい、俺たちは何となくくだらない世間話をしながらお酒を呑み続けていた。
マテオも俺もお酒には強い方なので気分こそいいものの、他に目立った変化はない。
お互いに少しだけ饒舌なくらいだ。
「ラナなんて一生結婚しなければいいのに。だからあの時も花冠を燃やしてやったんだよ」
「あはははっ!おまっ、それはやりすぎだろう!ラナもカイも災難だったな!」
「災難だったのは俺でしょ。あんなごっこ遊び見せられて気分が悪かったよ」
「はっ、嫉妬したのか?」
「…どうだろう」
目に涙を溜めて笑っているマテオをじっと見て、俺がアイツらに嫉妬していたのかどうか考えてみる。
あの時すごく気分が悪かったのは本当だ。
イラついて今すぐにでも2人を引き離したかった。
あの感情が嫉妬なのか?
「まぁ、ラナに結婚して欲しくない気持ちは同意するわ。その相手は俺じゃないと許せねぇのもな」
「相手がお前?」
「そう、この俺」
自信満々に笑っているマテオの横にこの前のラナを思い浮かべる。
…不愉快だ。
「お前でもダメだよ」
「ははっ、これはもう嫉妬確定だな」
愉快そうに笑っているマテオが不愉快で不愉快で仕方ない。
そう思ってギロリとマテオを睨んでみてもマテオはどこ吹く風だ。
「だけど自分の気持ちに気づくのがちっとばかし遅かったな、エイダン」
「は?」
「アイツの心はもうお前にはないだろ?」
「…」
マテオの言う通りだ。
ラナの心はもう俺のものではない。
俺は他の魔法使いたちと同じに成り下がってしまった。
カラリンッとコップの中の氷をマテオが鳴らす。
俺とマテオ以外誰もいない談話室にその音は静かに響いた。
「この氷みたいに溶けてなくなっちまったのかな」
「知らないよ」
「だろうな」
クスクス笑ってマテオがまたコップに口をつける。
そして今コップに入っているお酒を全部飲み干した。