だからこの恋心は消すことにした。
私の感動の眼差しを受け、アランは少しだけ苦笑する。
「私はそんな眼を向けられるようなことはしていないけどね」
そう言ったアランに私はすぐに首を横に振った。
何故そんな謙遜をするのかよくわからない。
「アランはとても優しいです。いつも私のことを思ってくれています。いつもいつも私はそんなアランに助けられているんです」
「ふふ、私は魔法使いよ?優しくなんてないわ。例えばアナタの選択ならどんなものでも歓迎とは言ったけど、正直、アナタの恋の相手が自分ならどれほどよかったのだろう、とは思っているからね。アナタの恋心を消したのも今度は自分に惚れさせる為にやったことかもしれないでしょ?」
怪しい笑みを浮かべて、私を見据えるアランは今のアランの言葉の通り、どこか邪悪で悪そうな雰囲気だ。
だが、私はアランがそうではないと知っていた。
「アランはそんなことしませんよ。少なくとも私には…ですか」
私の言葉にアランは「ふふ、そうね」とどこか嬉しそうに笑っていた。
「それで?エイダンをまた好きになって苦しいの?」
「…はい」
「理由は恋心を消した時と同じよね?」
「…はい」
先ほどのにこやかな雰囲気とは打って変わって、私たちの間に重苦しい空気が流れる。
私が暗い表情を浮かべているせいでだ。
「…エイダンは私を好きではありません。ですが、他人の…いえ、この場合は私の苦しんでいる姿が好きなんです。だから私を苦しめようとエイダンが最近、私の変化に気づいたのかいろいろなことをしてくるんです。手を繋いだり、キスをしたり、どれも私の心を試すようなことばかりを」
自分で話していてまた辛くなった。
エイダンの想いが改めて私にはないのだと思い知れば知るほど惨めな気持ちになった。