ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

「そう、尊敬。父上は……ちょっとわかりづらいけど、領地の民のことをすごく大切に想ってて。いつも、民が笑顔になるためにどうすればいいか考えてる。そんな父上がすごいなって思うし、ぼくも……そうなりたい……」

 尻すぼみに俯いてしまったリュカは、膝の上で両の指を強く握りこんだ。

「だから、水不足のことも、考えてた?」

「……うん。なにか少しでも役に立てたら、父上も認めてくれるかなって」

「そっか」

 だというのに、エヴラールには一蹴されてしまった。

 おそらくその瞬間に、リュカのなかの感情の糸が一本切れてしまったのだろう。

「でも、今回だけじゃないんだ。ぼく、いつもなにかできないかなって考えてて。だから、図書室で勉強してみたり、闇魔法の練習してみたり」

「リュカも闇魔法使えるの?」

「う、うん。まだ、簡単なものしか使えないけど。図書室にね、ちょっと古い魔法書があって、それ見ながらやってみてるんだ。最近だと、気配を消す魔法とか、遠くの声を聞ける魔法とかできるようになったよ」

「すごい……! リュカ、たっくさん努力してるんだね」

 だが、そんなリュカの健気な思いを知ってしまえば、よりいたたまれない。

 いっさい耳を傾けずに跳ね除けたエヴラールに非がある、と思ってしまう。いや、もしかしたら彼は、リュカの努力にも気づいていないのかもしれないけれど。

(でも、魔王さまとパパがいるのに、すぐ解決できてないってことは……きっとなにかしら理由があるはずなんだよね)
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