ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
ジルダ湖に出現した魔物とやらを倒して済む話なら、とっくに討伐しているはずなのだ。たとえ相手がどんなものであっても、現役魔王と元魔界の覇者が手を組んで倒せない相手などそうそういるはずもない。
(んー。その理由がわかんないと、なんもできないかも……)
ルイーズはひとり頭を悩ませて、むむむと唇を引き結ぶ。
友だちの力にはなってあげたいが、だからといって下手に口を出してグウェナエルに怒られるのも嫌だった。危険なこと、だというのはなんとなくわかるのだ。
「ねえ、ルゥ?」
「うん?」
呼びかけられ、ルイーズはきょとんとリュカを見た。
自分を見つめる彼の瞳がどこか迷ったように揺れていて、妙な胸騒ぎを覚える。
「ルゥのお父上……グウェナエルさまは、〝大魔王〟なんだよね? 父上が魔王になる前に仕えてて、ずっと前に魔界の王さまだったお方」
「っ、え。リュカ、知ってたの……?」
さすがにどきりとした。一瞬、心臓がびゃっと縮んだような気もする。
「知ってたというか、そうかなって思ってたんだけど……やっぱり、そうなんだ」
同じ城で過ごしている以上、隠し通せるものだとは思っていない。
だが、わざわざ明言はしていなかったことだ。
そもそもリュカに〝大魔王〟の知識がなければ結びつきもしないだろう。なにせ大魔王グウェナエルは、いまも人間界で封印されているはずの者なのだから。
「ぼくがもっと小さいときにね、父上がよく話してたんだ。自分はあくまでも〝仮〟の王なんだって。いつか〝本物〟の王が帰ってきたときのために、王位を守ってるんだって。……だからいつかは、王じゃなくなるんだって」