ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

 ふたたび聖女の力を行使し、水を浄化してみる。今度はなにごともなく順調に浄化が済み、ルイーズはほっと胸を撫で下ろした。

「……姫さま」

 そんなルイーズを断りもなく抱え上げてきたのは、言うまでもなくディオンだ。

 その表情が厳しく強張っているのを見て、ルイーズは冷や汗を流す。

「へーきだよ、ディー。さっきは力を出しすぎちゃったの。ルゥ、元気だよ」

 相変わらず過保護なディオンを安心させるように言うが、ベアトリスもリュカもそろって心配そうな面持ちでルイーズを見ていた。

(ホント、みんなして心配性なんだから)

 仕方ないなあ、とルイーズは苦笑するしかない。

 ディオンが放してくれそうにないので、大人しく抱かされたまま樽を指さす。

「ディー。あのお水、もうだいじょぶだよ。ルゥに飲ま──」

「ジ・ブ・ンが! 確認しますから! 姫さまはいけません!!」

 ディオンに決死の表情で遮られ、ルイーズはなかば呆れ気味に頷いた。

「じゃあ、お願い……」

 お任せを!といまは見えない尻尾をぶんぶん振ったディオンは、ルイーズをベアトリスに託すと、いきなり木樽に顔を突っ込んだ。

 はたから見たらシュール極まりないが、丹念に匂いを嗅いでいるらしい。

「え、あ、あの、なにを……?」

 状況がわからないのか、リュカはひとりおろおろしている。

 そんな彼の声には答えず、ディオンは人差し指で一滴だけ掬って口に含んだ。

 その瞬間、リュカが「わーーーっ!?」と普段の大人しさからはびっくりの悲鳴を上げた。まさかディオンが毒素入りの水を飲むとは思わなかったらしい。
< 135 / 193 >

この作品をシェア

pagetop