ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

 考えたあげく、ルイーズは汲んできた水を試しに浄化してみることにした。

「ルゥ、これきれいにしてみるね」

「きれいに? どうやるの?」

「見てて」

 笑顔で答えた瞬間、ディオンから『それ以上近づいちゃダメですよ絶ッ対ダメですわかってますよねいいこですもんね姫さま』という無言の圧力を感じた。

 どうやらこれ以上、樽に近づくことは許されないらしい。

 仕方ないので、ひとまず離れた場所から聖光力を使ってみる。

(ちょっと、久しぶりだけど)

 感覚を思い出して、身体の中心から力を操作する。ルイーズだけが視認できている綿雲で汲んできた水を丸ごと包むように覆い、毒素──穢れを取り除く。

(きれいきれいに……さっぱりと)

 いつも通りに力が流れ出した、そのとき。

 急に頭の内側が溶けるような感覚に襲われ、ぐらっと目眩がした。

「姫さま!」

「姫さまっ!?」

「ルゥっ……?」

 重心がよろけたところを、背後にいたベアトリスに支えられる。

 まさかこんなタイミングでふらつくとは思わず、ルイーズ自身も驚いていた。

(なにいまの。びっくりしたぁ……)

 目をぱちくりしながら体勢を立て直し、ふるふると頭を振ってみる。

「大丈夫ですか、姫さま。眩暈でも?」

「う、うん。なんだろ……ちょっと久しぶりで、集中しすぎちゃったかな。でも、だいじょぶだよ。えと、もう一回やってみるね」

 内心戸惑いながらも、ルイーズはベアトリスにいつも通りの笑みを向けた。

 こんなことでよけいな心配はかけたくなかったのだ。

「しかし、お身体が……」

「だいじょぶだいじょぶ。もう少しで、ちゃんときれいにできるから」
< 134 / 193 >

この作品をシェア

pagetop