ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
なけなしの効果しかもたらさなかった魔力壁も、いつまで保っていられるか怪しいところだ。グウェナエルの意識が途絶えれば、その瞬間、魔力制御も不可能になる。
そうなれば、この忌々しい水流に身体を揉まれた末に溺死か、あるいはそれより早く毒に蝕まれて息絶えるか。どちらにしろ、万事休すだ。
(こんな、ところで……ルイーズ……)
いよいよ音が遠くなってきた。
腕に抱えているはずのエヴラールの感覚もない。
霞がかった脳裏に浮かぶのは、パパ、と優しく微笑む愛しい娘の姿。
せっかく五年の月日を経て再会できたというのに、こんな最期だなんて。
(は……情けないにも、ほどがある)
本当はミラベルと共にルイーズの成長を見届けたかった。
彼女が成人するまで──いや、そのあとも。たとえ彼女が結婚して親元を離れていったとしても、幸せな生を歩んでいく娘の姿をそっと見守っていきたかった。
王ではなく、ただひとりの親として。
(……ミラベル、俺は……父親としてつくづく失格だな。おまえの願いを叶えてやれないまま、おまえの元に行くことを……どうか許してくれ)
グウェナエルは心のなかで謝罪しながら目を閉じた。
だが、その直後、思いもよらないことが起こる。
なにかが水面を割り、勢いよくグウェナエルの身体に巻きついたのだ。それに身体を掬いとられるがまま、グウェナエルはざばんと水中から引き上げられる。
いったいなにが起こったのか把握する間もなく、グウェナエルはジルダ湖の畔へ運ばれた。そのすぐ横へ、ぐったりとしたエヴラールもおろされる。
「グウェンさま! ああ、エヴラールさまも……っ!」