ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

 血相を変えて駆け寄ってきたのはディオンたちだ。

「父上……? 父、上……っ!」

 ベアトリスに連れられてきたリュカは、父の姿を見て全身を震わせる。

 ゆっくりと首を横に振り、信じられないと言わんばかりに呼吸を荒く乱した。

「ルゥ……どこ、だ」

 視界が霞んではっきりと状況を確認できないが、少なくとも駆け寄ってきた者たちのなかにルイーズの気配はなかった。

 朦朧とする意識のなか、グウェナエルは必死に娘の気配を探ろうとする。

「ここにいるよ、パパ」

 ふいに、頭上から声が降ってきた。

 同時に全身がなにやら温かいものに包まれて、急速に苦痛が楽になっていく。視界がさっぱりと晴れ、乱れていた呼吸が整い、痺れが嘘のように取れた。

 己の身体の変化を呆然と感じ、グウェナエルは上体を起こす。

 空間を伝うように視線を上げ──思わず、息を呑んだ。

「ル、イーズ」

 そこにあったのは、探していた娘の姿。

 だが、ルイーズの背にはグウェナエルのものによく似た漆黒の翼があった。長く美しい白銀の髪をなびかせ、ふわりふわりと宙に浮かんでいる。

 加えて、心配そうにこちらを見る瞳は、母親とそっくりだった澄んだ青色から塗り替えられ、グウェナエル同様、燃える炎のような真紅に染まっていた。

「だいじょぶ?」

「……ああ、いや……なぜ、その瞳……」

「ルゥのことは、あとでね。それより」

 地に降り立ったルイーズは、エヴラールへ目をやった。

 エヴラールはグウェナエルの隣でぐったりとしたままだった。彼も聖女の力を受けたのか、毒にやられていた肌は元の色に戻っているが、目を覚ます気配はない。
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