ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

 だが、疎いのか純粋なのか、あるいは外れているのか、ベアトリスは「そんな奇妙な名前の虫がいるのか……」と納得したらしい。

「その虫は、髪を食ったりするか? 食われていたら困るな」

「あ、んーん……食べないと思う……」

 そもそもこの地に〝虫〟はいない。

 男装の麗人、非の打ちどころがない見た目と経歴。だというのに、なぜか関われば関わるほどベアトリスのイメージが崩れていく。

(まあ、うん。とっつきにくいカンペキさんよりは、いっか……)

 ルイーズは自分に言い聞かせ、ディオンに抱えられたまま目を懲らした。

 抜群の視力を用いても、いまだ視界に捉えられる範囲にそれらしきものはない。

 だが、ようやくゴールが見えてきた冒険に、ひとり胸をざわめかせる。

(……パパ)

 ──もしもこの先、待ち受けている〝父〟がルイーズを拒絶したら。

 それこそルイーズの人生の冒険は、本当にそこで終わってしまうのだから。



 かくして、ベアトリスの髪の目印を追い、大魔王が封印されている〝石碑〟らしきものを探すたびに繰り出したわけだが。

 ──それは存外、簡単に見つかった。

「……これ?」

「これです。大魔王グウェナエルと刻印が入っているでしょう?」

 延々と変わり映えしない景色が続くザーベス荒野で、なんとも唐突に現れた石碑。

 石碑、とはいっても、それはごくごくちんまりとしたものだった。

(え、ちっちゃ。国語辞典と同じくらいしかない。え、ルゥのパパってこんなにちっちゃいの? えっ? ちっちゃ)

 五歳児のルイーズが抱えられそうなほどの大きさのソレ。
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