大嫌いなキミに愛をささやく日
ピリッと糸を張ったような煌人の鋭い声が、静かに響く。
「俺は父の息子、というだけです。その功績に、俺が胡坐(あぐら)をかくつもりはありません」
「えっ……あ、あはは。そうですか」
「それに、特別待遇を受けると父に怒られるので、ここは一つ。俺を助けると思って、他のお客様方と同じように接して頂けると嬉しいです」
さっきとは打って変わって、パッと明るい笑みを見せた煌人。杷木屋さんは「ははは」と、ハンカチで汗を拭いながら答えた。
「そこまで言われると、いやはや。そうですな。出過ぎた真似をしました」
「いえ、とんでもない。お気遣い感謝します」
すると、ベストタイミングで杷木屋さんのスマホが鳴る。
どうやら電話なようで「それでは失礼します」と、杷木屋さんは浅く礼をして去って行った。
「……はぁ~」
完璧に姿が見えなくなった途端、煌人が、それはそれは深いため息をついた。
「なんかスゴイ人だったね」