愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
(どうしよう。受け取っても私はもう、あのスポーツジムに行けない。あんなことがあったから。せっかくの厚意を無下にしたくないけど、使いもしないチケットをもらうわけにいかないし……)


「あの、スポーツジムは新たな会員を獲得するためにそのチケットを発行しているんだと思うんです。ですから入会する気のない私が何度も使うのは遠慮したいと思います。せっかく譲ってくださったのに、すみません」

嘘ではないがもっと大きな本当の理由は他にあり、それは恥ずかしいので打ち明けられなかった。

納得してくれなかった場合の次の手は思いつかず、鼓動を高まらせて返答を待っていたら、ポカンとした直後に吹き出された。

「真面目すぎ。でもそれが成美だよね。わかったよ」

チケットをしまった梢は代わりにと、飴玉をひとつ、成美の手に握らせた。

「今あげられるのは、これしかないや」

「ありがとうございます。苺ミルク味、大好きです。退勤してからいただきます」

「仕事中は飴も舐めないの?」

たとえ飴玉ひとつでも、成美は仕事中に間食しない。

電話や来客対応中に口の中に食べ物が入っていては失礼だと思うからだ。

< 10 / 282 >

この作品をシェア

pagetop