愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「はい」と真面目に答えれば、また笑われた。

「す、すみません」

「いいよ、成美はそのままで。ウケるから」

間違ってはいないと思うのに、面白がられて恥ずかしくなった成美は赤い顔をパソコンの画面に向けた。



今日は十八時の定時で退社し、電車に乗ってまっすぐに帰宅した。

自宅は線路沿いに建つ古いアパートで、母とふたり暮らしだ。

間取りは1DKと狭いが、節約生活を長年続けているため物が少なく、いつもすっきりと片づいている。

大きな家具は冷蔵庫と洗濯機、座卓と食器棚くらいだ。

居間の端にある狭い台所で夕食の支度をしていると、母が仕事から帰ってきた。

成美も小柄だが母はさらに五センチほども背が低く痩せている。

お金がもったいないからと三か月に一度しか髪染めをしないので、ショートボブの髪は白髪が目立った。

五十一歳の実年齢よりやや老けて見えるが、本人は気にしていないようだ。

生地はくたびれてもパリッと糊づけしたスーツ姿の母は疲れた顔をしており、包丁を置いた成美は冷たい麦茶をグラスに注いで座卓に置いた。

「お母さん、お疲れ様でした」

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