愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
(深刻な悩みかと思ったのに……!)

朝陽は時々こうやって成美をからかい、反応を楽しむ。

いつもは慌てたり恥ずかしがったりするだけの成美でも、本気で心配した分ムッとして、肩にかかる彼の腕を外した。

「ごめん、冗談だよ」

笑いながら謝った朝陽が、スッと真顔になる。

「考え事をしていたのは本当。君のお父さんについて考えていたんだ」

「え?」

「バージンロード、お父さんと一緒に歩きたかったと考えていたんじゃないか?」

「あっ……そうです」

成美が高校一年生の秋に父が行方をくらました話はしてある。

謝罪の手紙と離婚届を置いていったことも教えた。

朝陽は眉根を寄せて成美を見ている。

同情しているというより、納得いかないと言いたげな不満顔に見え、成美はうろたえた。

(借金があっても気にしないと言ってくれたのに、なにに引っかかっているの?)

「正直言うと、俺は君のお父さんを軽蔑している。自分だけ逃げだして、妻子に苦労させる卑怯者だと思っている」

成美は目を見開いた。

< 104 / 282 >

この作品をシェア

pagetop