愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
食欲のなさそうな彼を見て、成美は心配した。

「お部屋に戻って休みませんか?」

声をかけると、こちらを向いた朝陽がニコリとする。

「気遣ってくれたの? 優しいな。でも大丈夫、少し考え事をしていただけだから。実は、悩んでいるんだ」

これまで朝陽はいつも成美をリードしてくれて、弱々しい姿は見せなかった。

そんな頼もしい彼が片手で目元を覆い、大きなため息をついたから、成美の心配が膨らんだ。

「どのような悩みでしょう。差し支えなければ話していただけませんか?」

「聞いてくれるの?」

「もちろんです。私では頼りないかもしれませんけど、一緒に解決方法を考えたいです」

朝陽の方に体ごと向け、真剣な顔をしたら、片腕で引き寄せられた。

「きゃっ!」

急に楽しそうな顔をした彼に耳元で甘く囁かれる。

「どっちのベッドルームを使おうかと悩んでいた」

宿泊している部屋は贅沢にもロイヤルスイートで、ベッドルームは海に面した方と市街地が見える側のふたつある。

「昨夜は君の希望で別々に寝たけれど、結婚式を挙げたんだから今夜は一緒だ。どんな初夜にしたいか、希望はある?」

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