愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「そうか。人間誰しもいい面と悪い面があるよな。ひどい言い方をしてすまない」

真摯な目をして謝ってくれたので、成美もすぐに怒りを解いた。

(卑怯者だと思わないでほしいけど、仕方ないのかも。藤江さんはお父さんに会ったことがないのだから)

会わせたくても居場所さえわからないので、叶わぬ願いだ。

いつの間にかフラダンスが終わり、女性歌手がハワイアンソングをしっとりと歌っている。

「私も強く言い返してすみませんでした。食事の続きに戻りましょう。食べられそうですか?」

手つかずの彼の皿を勧めたが、返事ではなく問いかけられる。

「お父さんに会いたい?」

「はい、とても」

「わかった」

朝陽は一拍置いてから、海を見て頷いた。

その後は気持ちを切り替えたように食べ始める。

「オパカパカがうまいな。ハーブソルトのシンプルな味付けがいい」

「オパ?」

「この蒸し料理のヒメダイのハワイ名だよ」

「面白い名前ですね」

響きが気に入って「オパカパカ」と繰り返したら、朝陽が吹き出す。

「今までこの名に笑ったことはなかったんだが、成美さんが言うとたしかに面白い」

(どうして?)

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