愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
恥ずかしくて頬を染めると、魚の身を刺したフォークを口に差し入れられた。

恋人のような行為に、ますます頬が熱くなる。

「俺にも食べさせて」

「あの、同じ料理がひと皿ずつあるので、自分で――あっ」

成美の手ごとフォークを掴んだ朝陽が、サラダのマグロを差すとパクリと自分の口に入れた。

強引に食べさせ合い、いたずらっ子のように笑う彼に成美は口を尖らせる。

「もうっ」

怒っているのではなく、照れくさかったからだ。

「その文句、可愛い。もう一回、言って?」

「嫌です」

「俺の奥さんは照れ屋だな」

(奥さん……)

耳まで赤くなった成美が、これ以上のからかいに耐えられないとそっぽを向いても、朝陽にククッと笑われただけだった。



(明日、帰るんだ。あっという間だった)

滞在四日目の夜、ロイヤルスイートの広いバルコニーに出た成美は白い手すりに手をかけて藍色に染まった海を眺める。

心地いい夜風が下ろし髪を撫で、ワンピースの裾を揺らした。

上品なデザインの半袖ワンピースは、今日の昼間に訪れたショッピングモールのハイブランドブティックで朝陽が買ってくれたものだ。

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