愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
安堵感やどうしていなくなってしまったのかという疑問、日本で待っている母のことなど想いがあふれて、呼びかけたくても声にならない。

小柄な成美は顔と体の半分が朝陽の陰に隠れているので、父は気づいていない様子。

感極まる成美を横目で見た朝陽が、カウンター内から客席へと進む父を呼び止めた。

「及川さん」

「ん? 俺、君に名乗ったっけ?」

「名前は以前から知っています。会わせたい人がいて、あなたを探していました」

「はい?」

朝陽が椅子を立つと、父の目に成美が映った。

目を見開いた父の手からピザがすべり落ち、皿が割れる音が響いた。

「お父さん」

絞り出すように呼びかけると、ハッとした父が焦り顔で出口へと爪先を向けた。

「すまない……!」

逃げようとしている父を見て成美は慌てて立ち上がり、それと同時に朝陽が俊敏に動いて父の腕を掴んだ。

「及川さん、話し合いましょう」

「離してくれ。すまない。本当に申し訳ないが、どうか……」

ただならぬ雰囲気にオーナーと客たちは驚いていたが、すぐに大柄な男性客が父と朝陽の間に割って入った。

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