愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
父は品行方正を妻と娘に説き、自身も清く正しく真面目に生きてきたつもりだった。
警察官という職業に誇りを持ち、人を正しい道に導いても、自分が道を踏み外すことはないと信じていた。
自分ひとりでの借金返済が不可能で家族に迷惑をかけると悟った時に、そのプライドが砕け散った。
「なにもかも終わりにしたくなったんだ」
震える拳を見つめてポツポツと話す父はかつての堂々とした雰囲気を失い、弱々しく見えた。
成美は父の腕をさすりながら、悲しい気持ちで話の続きを待つ。
「どこか遠いところで人知れず命を絶ちたいと思い、日本を離れた。ハワイでなくてもよかったんだが、海外はここしか来たことがなかったから無意識に選んだのかもしれない」
父の唯一の海外旅行は三十年ほど前の母との新婚旅行だ。
ツアーで参加して観光地を巡ったそうで、その時の思い出の場所をさまよっていると、心にほんの少し生きる自信が戻ったという。
死ぬのはいつでもできるからと思い直し、アルバイトを探してその日暮らしを続けた。
警察官という職業に誇りを持ち、人を正しい道に導いても、自分が道を踏み外すことはないと信じていた。
自分ひとりでの借金返済が不可能で家族に迷惑をかけると悟った時に、そのプライドが砕け散った。
「なにもかも終わりにしたくなったんだ」
震える拳を見つめてポツポツと話す父はかつての堂々とした雰囲気を失い、弱々しく見えた。
成美は父の腕をさすりながら、悲しい気持ちで話の続きを待つ。
「どこか遠いところで人知れず命を絶ちたいと思い、日本を離れた。ハワイでなくてもよかったんだが、海外はここしか来たことがなかったから無意識に選んだのかもしれない」
父の唯一の海外旅行は三十年ほど前の母との新婚旅行だ。
ツアーで参加して観光地を巡ったそうで、その時の思い出の場所をさまよっていると、心にほんの少し生きる自信が戻ったという。
死ぬのはいつでもできるからと思い直し、アルバイトを探してその日暮らしを続けた。