愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「俺は、なんて情けない……」

指を伝って滴り落ちる雫に、帰らなかった十年間の懺悔と家族に嫌われていなかったと喜ぶ気持ちを感じた。

「お父さん、家に帰ろうよ。お金のことなら大丈夫。今は私も大人で働いているし、あと二十年ほどかかるけど完済までの見通しはついているから」

これまで朝陽から『俺に返済させてほしい』という申し出を何度か受けたが、そのたびに断っている。

今後も成美は仕事を辞めず、母と一緒に返済を続けるというのが、朝陽に要求した唯一の結婚の条件だった。

「申し訳ない」

父が涙声で謝ると、それまで静観していた朝陽が向かいのソファで口を挟む。

「そのことですが、私に返済させてもらえませんか? 失礼ですが債務の残金を調べさせてもらいました。私なら今すぐにでも一括返済できます」

その申し出に成美は慌てた。

「待ってください。家族だけで返すという話を承諾してくれたはずじゃなかったんですか?」

「俺も家族だろ」

心外だと言いたげに眉を寄せられ、成美は返事に困る。

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