愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
(私の夫で家族になったのは確かだけど、藤江さんに大金を払わせるわけにいかない。どう言ったら納得してくれるの?)

「お父さんと話をさせてほしい」

成美は口を挟むなという意味だろう。

温和な彼が珍しく強い口調で言ったので、成美は動揺して頷いた。

「お父さんが現れた以上、返済責任はあなたに戻りましたので、あなたが決断してください。私の資金援助を受けますか?」

「いや、それは……」

低く唸った父が、朝陽に申し訳なさそうな目を向けた。

「藤江さんのお気持ちはありがたいが、娘の夫とはいえ、出会ったばかりの君の援助は受けられない。妻の待つ日本に帰り、何十年かけてでも働いて自分で返済する。心配しないでくれ、結婚した成美にはもう迷惑をかけない。今後は借金とは無縁の生活を送ってほしい」

家に帰るという約束は嬉しいが就職先がすぐに見つかるかはわからないし、両親ふたりより成美も協力した方が早く完済できる。

手伝わせてほしいという思いで首を横に振ったら、朝陽が嘆息する。

< 123 / 282 >

この作品をシェア

pagetop