愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「成美さんは真面目で清らかで、頑固だ。娘の手を借りないと言っても、借金返済のために働き続けますよ。お父さんが私の援助を受けない限り、成美さんは自ら進んで苦労するんです。あなたの娘なのですから、おわかりでしょう?」

言葉に詰まったように呻いた父が、成美に困り顔を向けた。

朝陽に言われたのはその通りで、自分も一緒に返済するという固い意志は変わらない。

カランと氷が鳴る音がしたので朝陽を見ると、成美の淹れたアイスコーヒーを半分ほど飲んで息をついていた。

父に対し批判的な彼だったが、テーブルにグラスを戻した後はやれやれと言いたげな目で父娘を見比べた。

「この旅でお父さんに会えてよかったです。成美さんがどのように育てられたかがわかったような気がしましたから。清く正しい信念と頑なな真面目さはお父さん譲りですね。そこを含めて私は成美さんが好きなんです」

急に話題が逸れた気がして戸惑いつつも、好きだと言ってもらえて頬を染めた。

間接的に父を褒めてくれて嬉しくも思う。

朝陽は柔らかな口調で続ける。

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