愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
それを見ている父もホッとしたように表情を緩め、一気に空気が柔らかくなった気がした。

頼もしい夫の手は温かく、成美は心からの感謝を込めて握り返した。



時刻は二十二時。

連絡先を交換した後に父が帰ったのは、一時間ほど前だ。

成美は先ほどシャワーを浴びてルームウエアに着替えた。

ホテルのバスローブは着慣れていないので寝づらく、パジャマは日本から持ってくるのを忘れたため、初日にホテル内のブティックで購入した。

選べるほどの品数はなく、体の線がわかってしまいそうな薄いシルク生地のワンピースなのが気になったが、朝陽に勧められた透け感のあるネグリジェに比べたらまだ恥ずかしくない。

ミネラルウォーターで喉を潤してから、寝室に移動した。

窓から海が見えるこの寝室には、キングサイズの大きなベッドが中央に置かれている。

ハワイに着いてからの三度の夜を、成美はこのベッドでひとりで過ごした。

もうひとつの市街地が見える側の寝室はクイーンサイズのベッドがふたつ並んでいるのだが、そこは朝陽が使っていた。

(今夜はどこで……まだ考えないようにしよう)

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