愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
ウエストの紐を締めていないので、ほどよく筋肉のついた大胸筋と腹筋が見えている。

成美は心臓を大きく波打たせ、すぐに手元に視線を戻した。

「明日、時間に余裕を持って出発できるように準備しています」

「真面目だな」

(どうしてこんなにドキドキするの。藤江さんの体はスポーツジムのプールとこの旅でのシュノーケリングで見たのに)

ドアが閉まる音がして、緊張が増す。

床の上でスーツケースに荷物を出し入れしつつも、背後の朝陽が気になって仕方ない。

するとクスッと笑う声がして、隣に彼がしゃがんだ。

肩に腕を回され、至近距離から顔を覗き込まれる。

「もしかして、緊張してる?」

「し、していません」

「本当? 今夜は同じベッドで寝るのに? 帰り支度でもしていないと落ち着かない心境なのかと思った」

「違います。私たちは夫婦ですから、そういう行為はあるものと思って旅行に臨みました。私は大丈夫です」

耳まで火照らせて目は泳ぎ、鼓動は苦しいほど高鳴っている。

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