愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
本心を明かせば緊張と恥ずかしさでいったん逃げ出したいほどなのだが、ベッドをともにするのを拒否していると勘違いされないよう耐えていた。

それなのに朝陽は楽しそうな顔をしてからかう。

「度胸があるんだな。それならキスのひとつやふたつ、平気だね?」

「えっ?」

チョコレート色をした甘い瞳に蠱惑的な光がともる。

舌先で下唇を湿らせた彼が、成美を引き寄せて顎をすくった。

(待って、心の準備が……!)

焦って彼の胸を押し返そうとしたら、湯上りの温かい肌に触れてしまった。

さらに鼓動は跳ね上がり、慌てて引っ込めようとした手を握られて唇が重なった。

「んっ」

反射的に目をつむり、唇を硬く引き結ぶ。

ついばむような優しいキスを繰り返した朝陽は、数秒して顔を離した。

「もっと深いキスがしたいんだが。嫌ならしないけど」

「嫌じゃないです。でも、あの……」

「まだ完全に心を許してくれないか。俺は君が高校生の時から知っているけど、君からしたら出会って間もない男だよな。仕方ない」

成美のために今夜も別々に寝るつもりなのか、朝陽が立ち上がってドアに向かう。

(違うの!)

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