愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
慌てて彼の背に抱きつくようにして引き留めた。

「成美さん? 無理しなくていいんだよ。まずは君からの信頼を得られるよう、俺が努力しなければ」

「もうとっくに信頼しています」

頼りがいがあるという印象は、この旅で強まった。

初めての海外旅行で困らずに楽しめたのは朝陽がうまくリードしてくれたおかげだ。

会いたくて夢にまで見た父も探し出してくれて、朝陽への信頼は十分すぎるほど大きく膨らんでいる。

「もしかして結婚式をハワイで挙げようと言ったのは、お父さんがいると知っていたからですか?」

そうに違いないと思って聞いている。

彼なら挙式場所の希望を成美に聞きそうなものなのに、珍しく『ハワイにしようと思う』と主張した。

その時は単にハワイが好きなんだと思っただけだったが、偶然にしてはできすぎている。

朝陽は成美の腕を解いて向かい合い、バツが悪そうに苦笑した。

「実は、君のお父さんの居場所はだいぶ前に知った。お見合いの後に調べたんだ」

調査会社を使い、父がハワイにいるとすぐに突き止めたそうだが、住まいまではわからなかった。

< 131 / 282 >

この作品をシェア

pagetop