愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
〝この辺りのどこかの飲食店で夕方から働いている〟というあやふやな情報を得るに留まっていたそうだ。

それで朝陽が自分の足で目撃情報があった地区を調査した。

ハワイの滞在二日目から仕事関係者に会うと言ってひとりで出かけていたのは、成美の父親捜しをしていたためだった。

「嘘をついてすまない」

「いえ、そんな。私のために捜してくれたんですから。資金援助についても、なんと言ってお礼を伝えていいのかわからないほど感謝しています。本当にありがとうございます」

成美と一緒の夜を過ごしたくないから出かけるのかと不安になったが、朝陽の苦労を思えば少しも責める気にならない。

心からのお礼を伝えたのに、彼はますます決まりが悪そうな顔をした。

「正直に言うと、お父さんを捜し出すべきか迷っていた」

「え?」

成美を連れてハワイに来たものの、無責任な父親とは縁が切れたままの方が成美のためではないかと、再会させるのをためらっていたそうだ。

しかし成美が今でも父親を尊敬し、心から会いたいと思っている気持ちが伝わったため、考えを改めたのだ。

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