愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
(ハワイアンショーを見ながら話した時のこと? 父に対して随分とひどい言い方をすると怒ってしまったけど、本当は……)

わざと成美を怒らせて、父親への気持ちの程度を確認したのかもしれない。

あの夜の心の傷が癒えていく。

(藤江さんは、私のためになにができるか真剣に考えてくれる人。本気で私を想ってくれているんだ)

朝陽への信頼が最大限にまで膨らんだら、心の奥がきゅっと締めつけられるように苦しくなった。

それは切なく甘い感覚で、胸に手をあて初めての感情と向き合う。

(これが恋なんだ……)

真面目な成美は子供の頃は特に悪ふざけが許せず、度々クラスメイトに注意していたので煙たがられる存在だったように思う。

クラス内でふざけるのは大抵男子で、異性に対していいイメージを持てず、これでは恋をするどころではない。

社会人になってからは真面目に働く男性上司や同僚に好感を抱けるようになったが、借金返済中なので憧れる余裕はなかった。

そんな自分がまるで生まれ変わったかのように心をときめかせ、朝陽が眩しく見えて愛しさが泉のように湧き上がる。

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