愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
六人掛けのダイニングテーブルに向かい合い、朝陽の作ってくれたチンジャオロースに箸を伸ばす。

ピーマンとたけのこはシャキシャキで歯触りがよく、肉の旨味と醤油、ゴマ油、生姜のいい香りが口に広がった。

「美味しいです」

心からの感想を伝えたのに、朝陽に首を傾げられた。

「お世辞じゃなく本心ですよ?」

「ああ。我ながら上出来だと俺も思う。そうじゃなく、さっきからなにをそんなに気にしているのかと思って。心配事や不安がある時の成美は、笑顔がぎこちないからすぐにわかる」

「あっ……」

成美は箸を止めて目を泳がせた。

仕事への理解と応援、料理をしてくれたことに対して悩んでいるとは言いにくい。

しかし気のせいだと言っても夫は騙されてくれないだろう。

「朝陽さんの優しいお気遣いには心から感謝しているんです」

そう前置きしてから成美はぼそぼそと、朝陽に家事の負担をかけたくないので仕事を辞めようか迷っていると打ち明けた。

「なるほど。成美らしい、真面目な悩みだ」

そう言いながらも朝陽は箸を止めず、成美にも食べるよう勧める。

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