愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「成美は俺に気を使いすぎ。俺はもっと頼ってほしいと思っているんだよ。遠慮はいらない。それと硬く考えすぎ。成美自身を苦しめるようなルールは作らないでほしい。家事は手が空いている方がやればいい。お互いに忙しいなら家事代行を頼んでもいいんだ。仕事が楽しいから続けたいんだろ?」

「はい。ありがとうございます……」

浮かない顔の成美は卵スープに口をつける。

とろとろの卵がするっと喉を通り、夫は料理経験が少なくてもセンスはいいようだ。

(硬く考えすぎだとは自分でも思う。でもどうしても朝陽さんに遠慮してしまう。子供の頃からこういう性格だから、今さら直せなくて……)

「納得いかない顔だな。もっとわがままになりなよ。なにかやりたいことはない?」

朝陽に期待の目を向けられた。

なにか希望した方が喜んでもらえそうで、成美は遠慮をいったん頭の隅に寄せて考える。

(私のやりたいことってなんだろう。結婚するまで、やらなければならないことをこなしていただけの毎日だったから思いつかない)

真剣に悩むあまり眉間に皺が寄ってしまい、夫に苦笑される。

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