愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「例えば演劇や好きなアーティストのライブを観にいくのはどう? 友人との旅行もいい。一日中ダラダラするのもいいと思うよ」

なにも思いつかない妻に代わって提案してくれたようだが、どれも成美に向いていない。

エンターテイメントにうとく、演劇やライブと言われてもピンとこなかった。

旅行に一緒に行ってくれそうな友人といえば梢くらいだが、きっと旅行よりショッピングにお金をかけたいと言われそうだ。

怠惰な生活はいけないと両親から教えられて育ったため、一日中ダラダラすれば罪悪感を抱いてしまう。

(私のために考えてくれたのに、どれもそそられない。私って、なんて面白みのない人間なの)

融通の利かない真面目さに自己嫌悪したら、朝陽が慌てた。

「もっと軽く考えて。やりたいことがすぐに思いつかないなら、欲しい物は?」

身に着けるものは夫が大量に買ってくれて、そろそろクローゼットに収まらない。

服もバッグも当分なにもいらないが、夫をがっかりさせたくないので必死に欲しい物を考えた。

(そうだ!)

成美はパッと顔を輝かせると、初めておねだりする。

「前から欲しかったものがあるんです」

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